予納制度で延滞税を抑える|税務調査の追徴税額は修正申告前に納付できる

監修 税理士 有馬 誠治

「税務調査で追徴税額が発生した」と聞くと、納税額の大きさに不安を感じる経営者の方は少なくありません。

しかし、追徴されるのは本税や加算税だけではありません。納付が遅れた期間に応じて、利息にあたる延滞税もかかります。

この記事は、税務調査で追徴が見込まれる法人・個人事業主の方を対象に、延滞税の負担を抑える「予納制度」の仕組みと、利用する際の手続き・注意点を、分かりやすく解説します。

 

税務調査で追徴税額が発生!納税者にできる対策とは?

まずは、税務調査で追徴税額が発生したときにどのような負担があるのかを押さえておきましょう。

追徴税額だけでなく、延滞税などの付随負担も問題になる

税務調査での納税は、本来の税金(本税)や、過少申告加算税・重加算税などの加算税だけではありません。

法定納期限から遅れて納付することによる、利息(いわゆる延滞税)の負担も発生します。

延滞税は日割りで計算されるため、納付が遅れるほど金額が増えていきます。

修正申告前でも、税金を先に納付できる「予納制度」がある

修正申告を行う予定はあっても、税務署との最終的なすり合わせや、税務署内の決裁に時間がかかることがあります。

この間も、延滞税はずっと発生し続けます。

そこで、延滞税の計算をストップする納税者救済の制度として設けられているのが、予納制度です。

予納制度とは?修正申告前でも納付できる仕組み

予納制度は、税額が正式に確定する前に、納税者が見込んだ税額を先に納めておける制度です。

国税通則法第59条第1項第2号に基づく制度の概要

予納の根拠は、国税通則法第59条です。予納できる国税として、次の2つが定められています。

・納付すべき税額は確定しているが、納期がまだ来ていない国税(第1号)
・最近において納付すべき税額の確定が確実と認められる国税(第2号)

税務調査で追加の納税が見込まれるケースは、第2号にあたります。

税務調査で追加納税額が見込まれる場合の利用要件

税務調査の指摘内容に納得し、修正申告をすることが決まっていれば、「近いうちに税額が確定することが確実」な状態といえます。

この段階であれば、修正申告書の提出前でも予納が可能です。

税額確定前に予納できる仕組み

予納は、納付する旨を税務署長に申し出たうえで納付します。

なお、予納した金額は、還付を請求することができません(国税通則法第59条第1項)。ただし、法律の改正その他の理由により納付の必要がなくなった場合は、過誤納金として返還されます(同条第2項)。

予納のメリットは?延滞税の負担を抑えられる可能性

予納の最大のメリットは、延滞税の計算をその時点で止められることです。

予納によって延滞税の負担を抑えられる可能性がある

延滞税は、次の式で計算されます。

延滞税 = 未納の税額 × 割合 × 日数 ÷ 365日

日数は、法定納期限の翌日から納付が完了した日までの日数で計算します。

割合は、納期限から2か月以内かどうかで大きく変わります。

延滞税の割合(令和8年)
期間割合(令和8年)
納期限の翌日から2か月を経過する日まで年2.8%
納期限の翌日から2か月を経過した日以後年9.1%

*スライドすることで表の全てが読めます。

(※適用される割合は、年によって異なります。)

調査期間中は、本来の法定納期限(当初の申告期限)の翌日から2か月間は年2.8%、2ヶ月を経過した日以後は年9.1%が適用されます。

そのため、税務調査が長引いている間の未納期間には、年9.1%の割合で延滞税が発生しています。

たとえば、調査による追加納付額が300万円だった場合、最終的な調査終結の3か月(90日)前に予納できれば、次の延滞税を抑えられます。

300万円 × 9.1% × 90日 ÷ 365日 = 約67,000円

過去3年分の修正申告が必要な場合など、追徴額が大きいほど予納の効果も大きくなります。

本税や加算税そのものが減額される制度ではない点に注意

予納しても、本来納付しなければいけない所得税や法人税の本税は減額されません。

増差税額が発生したことによる過少申告加算税や重加算税などの加算税も同様です。

あくまでも、本税に付随する利息としての延滞税を軽減するための制度です。

予納制度を利用するための手続き

予納制度を利用するには、申出と納付の2つの手続きが必要です。

手続き1: 税務署長へ「国税の予納申出書」を提出する

予納するには、所轄の税務署長へ「国税の予納申出書」の提出が必要です。

手続き2: 予納金を納付する

納付方法は、次の2つから選ぶことができます。

・金融機関の窓口での納付
・e-Tax(ダイレクト納付)による納付

ダイレクト納付の仕組みや利用方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。

 

予納を検討すべきケースと注意点

予納はどのケースでも大きな効果があるわけではありません。検討すべきケースと注意点を確認しておきましょう。

追徴税額が大きく、税額の最終確定まで時間がかかるケース

予納の効果が大きいのは、追徴税額が大きく、修正申告までに時間がかかりそうなケースです。

・複数年分の修正申告が必要な場合
・税務署との最終調整や、署内の決裁に時間がかかる場合

注意点1: 資金繰りへの影響

予納は、税額確定前にまとまった資金が出ていきます。

手元資金とのバランスを踏まえて、予納する金額を決めましょう。

注意点2: 年分によっては効果が限られる

法定申告期限から1年を経過してから修正申告する場合、一定の期間は延滞税の計算期間に含めない特例があります(偽りその他不正の行為により税を免れた納税者が、調査があったことを予知して提出した修正申告である場合を除く)。

そのため、どの年分を予納すべきかは、税理士と相談して判断することが大切です。

まとめ: 税務調査では付随的な税負担にも目を向ける

税務調査で追徴税額が発生した場合、本税や加算税だけでなく、延滞税の負担にも目を向けることが大切です。

予納制度は、税務調査に伴う納税負担を抑えるための選択肢のひとつです。

ただし、利用にあたっては、要件や資金繰りを踏まえた判断が必要です。税務調査で追徴が見込まれる方は、予納すべきかどうかも含めて、ぜひ早めに当事務所へご相談ください。

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