ダイレクト納付とは?国税・地方税をまとめて口座引き落としにする方法を税理士が解説【コスト0円】

監修 税理士 有馬 誠治

毎月10日の朝、納付書を持って銀行の窓口に並ぶ——。源泉所得税や住民税の納付が、経理担当者の「月初の恒例行事」になっていないでしょうか。窓口での待ち時間や納付書の作成・保管は、ひとつひとつは小さな手間でも、毎月積み重なると大きな負担になります。

こうした納付事務をまとめて効率化できるのが「ダイレクト納付」です。国税はe-Tax、地方税はeLTAX(エルタックス)を通じて、あらかじめ届け出た会社の預貯金口座から税金を引き落とせる仕組みで、手数料は0円。導入すれば、銀行に行かずに納付が完結します。

この記事では、ダイレクト納付の仕組みと対象となる税金、利用届出書の提出から利用開始までの流れ、そして導入すると毎月の納付事務がどれだけラクになるのかを、税理士がわかりやすく解説します。

 

目次

ダイレクト納付とは?仕組みをわかりやすく解説

ダイレクト納付とは、e-Tax(国税電子申告・納税システム)やeLTAX(地方税ポータルシステム)を利用して、事前に届け出た預貯金口座から口座引き落としで国税・地方税を納付できる電子納税の仕組みです。申告データを送信したあと、画面の操作だけで納付まで完了するため、納付書の作成も銀行への移動も必要ありません。

■ 「今すぐ納付」と「納付日を指定」の2つが選べる

ダイレクト納付では、操作したその場で引き落とす「即時納付」と、納付する日をあらかじめ指定しておく「期日指定納付」を選べます。たとえば申告書の提出は早めに済ませておき、引き落としは納期限の日に指定する、といった資金繰りに合わせた使い方が可能です。

■ インターネットバンキングの契約は不要

電子納税にはインターネットバンキングを使う方法(登録方式・入力方式)もありますが、ダイレクト納付はインターネットバンキングの契約がなくても利用でき、振込手数料のような費用もかかりません。普段使っている会社の口座を、そのまま納税用に使えるイメージです。

ダイレクト納付のここがポイント
・手数料0円(インターネットバンキング契約も不要)
・銀行の窓口に行かずに納付が完結する
・「即時納付」と「期日指定納付」を選べるので資金繰りに合わせやすい

 

ダイレクト納付で納められる税金一覧(国税・地方税)

ダイレクト納付の対象は、国税・地方税ともに広範囲に及びます。日常の経理で登場する主要な税金は、ほぼカバーされていると考えてよいでしょう。

ダイレクト納付で納められる主な税金(2026年8月時点)

■ 国税(e-Tax)
法人税・地方法人税、消費税及び地方消費税、源泉所得税、申告所得税、相続税・贈与税など、e-Taxで納付手続きができるほぼすべての税目(加算税・延滞税などの附帯税を含む)

■ 地方税(eLTAX)
法人住民税、法人事業税・特別法人事業税、個人住民税(給与からの特別徴収分・退職所得分)、事業所税など。さらに固定資産税・都市計画税・自動車税種別割・軽自動車税種別割などの納付書で届く税金も、地方税統一QRコード(eL-QR)を通じた納付に対応

 

※対象となる税目は制度改正等により変わることがあります。最新の対象範囲は国税庁・eLTAXの案内でご確認ください。

特に地方税は、2019年に始まった「地方税共通納税システム」により、複数の市区町村への納付を一度の操作でまとめて行えるようになりました。従業員の住民税を多くの市区町村へ納めている会社ほど、効果を実感しやすい仕組みです。

ダイレクト納付のやり方|利用届出書の提出から利用開始まで

ダイレクト納付を始めるには、国税と地方税それぞれで事前の手続きが必要です。流れ自体はシンプルですが、利用開始までに時間がかかる点に注意してください。

■ 国税(e-Tax)の場合

①e-Taxの利用開始手続きを行い、利用者識別番号を取得します。②「ダイレクト納付利用届出書」に口座情報を記入し、金融機関の届出印を押したうえで所轄の税務署へ提出します。個人の方はe-Taxからオンラインで提出できますが、法人は書面での提出が必要です(2026年8月時点)。③審査・登録が完了すると、e-Taxのメッセージボックスに利用可能の通知が届き、ダイレクト納付が使えるようになります。

利用開始までの期間は、書面提出の場合でおおむね1か月程度、個人のオンライン提出では1週間程度が目安とされています(金融機関により異なります)。

■ 地方税(eLTAX)の場合

①eLTAXの利用届出を行い、利用者IDを取得します。②eLTAXのソフト(PCdesk)などから口座振替の情報を登録します。金融機関によっては書面での手続きが必要な場合があります。なお、国税・地方税とも、すべての金融機関がダイレクト納付に対応しているわけではないため、会社のメインバンクが対応しているかを最初に確認しておきましょう。

届出のタイミングにご注意
利用開始までには1か月程度かかることがあります。決算後の法人税・消費税の納付や、毎月の源泉所得税・住民税から使い始めたい場合は、納期限から逆算して早めに届出書を提出しておくのがおすすめです。

 

【効果試算】毎月10日の源泉所得税・住民税の納付事務はどれだけラクになるか

従業員の給与から預かった源泉所得税と住民税(特別徴収分)は、原則として翌月10日までに納付します。つまり多くの会社では、毎月10日までに銀行で納付する事務が発生している計算です。

窓口納付の場合、納付書の作成・確認、銀行への往復、窓口での待ち時間を合わせると、仮に1回あたり60〜90分かかっているとすれば、年間では約12〜18時間が納付のためだけに使われていることになります。従業員の住所地が10の市区町村に分かれていれば、住民税の納付書はその数だけ作成・管理が必要です。

窓口納付とダイレクト納付の比較(イメージ)
 銀行窓口での納付ダイレクト納付
銀行への移動・待ち時間毎月発生(混雑時は長時間になることも)不要(社内のパソコンで完結)
納付書の作成・管理市区町村ごとに作成・保管が必要不要(複数の市区町村へ一括納付)
手数料窓口納付自体は無料(移動・人件費の負担)0円
納付のタイミング銀行の営業時間内のみ即時納付または期日指定納付

*スライドすることで表の全てが読めます。

※上記は一般的な事務の流れをもとにしたイメージ・試算の一例です。実際の削減効果は、会社の従業員数や納付先の市区町村数などにより異なります。

源泉所得税について「納期の特例」(年2回にまとめて納付する制度)を受けている会社でも、住民税の特別徴収は原則として毎月の納付が必要です。毎月の銀行往復がなくなる効果は、規模の小さな会社ほど相対的に大きいといえるでしょう。

導入後のつまずきポイントと対処法

便利なダイレクト納付ですが、導入した会社が実際につまずきやすいポイントがいくつかあります。あらかじめ知っておけば、いずれも防げるものばかりです。

■ 残高不足で引き落としができなかった

指定日に口座残高が不足していると引き落としが行われず、納付は完了しません。納期限を過ぎれば延滞税が発生する可能性があります。期日指定納付を使う場合は、引き落とし日の前営業日までに残高を確認する運用をルール化しておきましょう。

■ 利用開始が納期限に間に合わなかった

届出書の提出から利用開始まで1か月程度かかるため、「今月の納付から使いたい」は間に合わないことがあります。利用開始までの間は、従来どおり納付書などで納付してください。

■ 土日祝や夜間に即時納付ができないことがある

即時納付は、e-TaxやeLTAX、金融機関のシステムの稼働時間内でのみ利用できます。休日をはさむ場合は、あらかじめ期日指定納付を設定しておくと安心です。

■ 利用している金融機関が対応していなかった

一部の金融機関はダイレクト納付に対応していません。届出書を出す前に、国税庁・eLTAXが公表している利用可能金融機関の一覧を確認しましょう。対応していない場合は、対応している別の口座を納税用に使う方法もあります。

社用車の多い会社は自動車税・軽自動車税にも活用できる

営業車両を多く保有する会社では、毎年5月に自動車税種別割・軽自動車税種別割の納付書が車両の台数分届き、1枚ずつ銀行で納付する作業が発生します。台数が多いほど、この事務負担は無視できません。

現在は、納付書に印字された地方税統一QRコード(eL-QR)を利用して、「地方税お支払サイト」やeLTAXの仕組みを通じた納付ができるようになっており、口座からの引き落とし(ダイレクト方式)にも対応しています。複数台・複数の自治体分をまとめて処理できるため、社用車の多い会社ほど効果の大きい活用方法です。

※対応状況や利用できる支払い方法は自治体・金融機関により異なります。

よくある質問(FAQ)|ダイレクト納付の疑問にお答えします

最後に、ダイレクト納付について経営者・経理担当者の方からよくいただく質問にお答えします。

Q.個人事業主でもダイレクト納付は使えますか?「振替納税」との違いは?

A.使えます。個人の方は利用届出書をe-Taxからオンラインで提出でき、書面よりも短い期間(1週間程度が目安)で利用を開始できます。よく似た制度に「振替納税」がありますが、振替納税は個人の申告所得税と消費税に限られた口座振替の仕組みです。ダイレクト納付は法人も利用でき、源泉所得税をはじめ対象税目がはるかに広いのが違いです。個人事業主で従業員を雇っている方は、振替納税とダイレクト納付を併用すると納付事務をほぼキャッシュレス化できます。

Q.ペイジー(インターネットバンキングでの電子納税)とは何が違いますか?

A.インターネットバンキングを使う電子納税(登録方式・入力方式)は、金融機関とのインターネットバンキング契約が前提で、納付の操作をしたタイミングでの支払いになります。これに対しダイレクト納付は、インターネットバンキング契約が不要で、「即時納付」に加えて納付日をあらかじめ指定する「期日指定納付」が選べます。資金繰りに合わせて納期限ぎりぎりの引き落とし日を指定できる点は、ダイレクト納付ならではのメリットです。

Q.領収書(領収証書)は発行されますか?納付できたかはどこで確認しますか?

A.ダイレクト納付では、金融機関の窓口でもらえるような領収証書は発行されません。納付結果は、e-Taxのメッセージボックスに届く納付完了の通知(地方税はeLTAXの納付履歴)と、預金通帳の引き落とし記録で確認します。社内の経理証憑としては、この通知を印刷またはPDF保存しておく運用がおすすめです。どうしても紙の領収証書が必要な場合は、従来どおり納付書で窓口納付する必要があります。

Q.引き落とし口座は複数登録できますか?

A.国税のダイレクト納付では、複数の金融機関の口座を届け出ておき、納付のたびに使う口座を選ぶことができます。「法人税は普段のメインバンク、源泉所得税は給与振込用の口座」といった使い分けも可能です。口座を追加する場合は、その口座についての利用届出書をあらためて提出します。

Q.納付の操作を顧問税理士に任せることはできますか?

A.できます。e-Tax・eLTAXでの申告を税理士が代理送信している場合、ダイレクト納付の手続きまで税理士側で行い、会社は「指定日に口座残高を用意しておくだけ」という運用が可能です。引き落とされるのはあくまで納税者(会社)名義の届出口座なので、税理士にお金を預ける必要はありません。当事務所でも、申告から納付手続きまでを一括して代行するサポートを行っています。

Q.「ダイレクト納付利用届出書」はどこで入手して、どこに提出すればよいですか?

A.国税分の利用届出書は、国税庁ホームページからダウンロードできるほか、税務署の窓口でも入手できます。必要事項を記入し、金融機関の届出印を押したうえで、所轄の税務署に提出(持参または郵送)します。個人の方はe-Taxからのオンライン提出も可能です。地方税分は、eLTAXの利用届出とあわせて口座情報を登録します。記載する口座名義や届出印の相違は差し戻しの原因になりやすいので、提出前によくご確認ください。

Q.引き落とし口座を変更したい・利用をやめたいときは、どうすればよいですか?

A.口座の変更や利用の取りやめも、利用届出書の提出により手続きします。変更の場合も新しい口座の登録が完了するまでに時間がかかることがあるため、納期限が近い時期の変更は避け、余裕をもって手続きするのが安心です。会社の合併や商号変更、金融機関の統廃合があった場合も、届出内容の変更が必要になることがあります。

まとめ|経理の効率化・キャッシュレス納付の導入は税理士にご相談を

この記事のまとめ
・ダイレクト納付は、届け出た口座から手数料0円で国税・地方税を引き落とせるキャッシュレス納付の仕組み
・国税はe-Tax、地方税はeLTAXから利用でき、主要な税目はほぼカバーされている
・利用開始までは1か月程度かかることがあるため、納期限から逆算して早めに届出を
・毎月10日の源泉所得税・住民税の納付事務が、銀行に行かずに社内で完結する
・残高不足による引き落とし不能には注意(延滞税が発生する可能性)

 

ダイレクト納付は、一度導入してしまえば毎月の納付事務を継続的に軽くしてくれる、費用0円の業務効率化策です。一方で、e-TaxやeLTAXの初期設定、届出書の作成、導入後の納付スケジュールの設計には、専門的な知識があるとスムーズです。

当事務所では、ダイレクト納付をはじめとするキャッシュレス納付の導入支援から、経理業務全体の効率化のご提案まで、まとめてサポートしています。「うちの会社でも使えるのか」「何から手を付ければよいか」という段階でも、お気軽にご相談ください。

PREV
非上場株式の評価方法が見直しへ|2028年適用見通しと事業承継を急ぐべき理由を税理士が解説