企業型DC加入中にiDeCoを始める条件と手続き|2024年改正後の新ルールを税理士が整理

監修 税理士 有馬 誠治

「企業型DCに加入しているけど、iDeCoも始めたい。2024年の改正後、何か変わったの?」

そんな疑問をお持ちの方は多いはずです。2024年12月に実施された法改正により、企業型DC加入者がiDeCoを併用するためのハードルは大幅に下がりました。以前は会社の規約に定めがなければiDeCoに加入できませんでしたが、現在は規約の定めなしに原則として全員が加入可能となっています。

この記事では、企業型DCに加入しながらiDeCoを始めるための条件・上限額・手続きの流れを、2024年改正後の現行ルールに基づいて税理士がわかりやすく整理します。

2024年改正前後で何が変わったか?まず大枠を整理

企業型DC加入者がiDeCoを利用するルールは、段階的に緩和されてきました。現行ルールを理解するために、まず改正前後の変化を確認しておきましょう。

改正前(〜2024年11月)のルール

改正前は、企業型DC加入者がiDeCoに加入するには以下の条件をすべて満たす必要がありました。

改正前の条件(〜2024年11月)
・会社の企業型DC規約に「iDeCoとの併用を認める」旨の定めがあること
・会社が定めた事業主掛金の上限額の範囲内でiDeCo掛金を拠出すること
・マッチング拠出を利用していないこと
(※加入要件は時期・会社の状況により異なる場合があります)

 

改正後(2024年12月〜現在)のルール

2024年12月の法改正により、会社の規約の定めが不要となりました。企業型DC加入者は原則として、会社の規約に関係なく個人でiDeCoに加入できます。

改正後の主な変更点(2024年12月〜)
・会社規約の定めなしにiDeCoへの加入が可能に(原則として全員対象)
・企業型DC掛金+iDeCo掛金の合計に上限あり(後述)
・マッチング拠出を利用中の従業員はiDeCoとの重複不可(どちらか一方を選択)
(※個別の状況により適用が異なる場合があります)

 

企業型DC加入中にiDeCoを始める3つの条件

現行ルールのもとで企業型DC加入者がiDeCoに加入するには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

条件①:掛金の合算が上限額を超えないこと

企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合計額が、定められた上限内に収まることが必要です。上限額は会社の状況によって異なります

掛金合算上限一覧
会社の状況合算上限iDeCoの上限目安
企業型DCのみ(確定給付型なし)月額 5万5,000円月額 2万円
確定給付型等を併用月額 2万7,500円月額 1万2,000円

※上記の数値は2024年時点の制度に基づきます。税制・制度は改正されることがあるため、最新情報は厚生労働省の公式案内をご確認ください。

条件②:マッチング拠出を利用していないこと

企業型DCのマッチング拠出(従業員が事業主掛金に上乗せして拠出できる制度)を現在利用している場合、iDeCoとの重複利用はできません。マッチング拠出を停止してiDeCoに切り替えるか、マッチング拠出を継続するかを選択する必要があります。

マッチング拠出 vs iDeCo 選び方の目安
・マッチング拠出:会社が上乗せ拠出してくれる場合は会社負担分の恩恵が大きい
・iDeCo:自分で運用商品を幅広く選びたい場合や、転職・独立の可能性がある場合に柔軟性が高い
(※どちらが有利かは個人の状況により異なります。専門家への相談を推奨します)

 

条件③:iDeCoの加入資格を満たしていること

企業型DC加入者であっても、iDeCoへの加入資格は別途必要です。現行制度では、国民年金の被保険者であること、および原則として65歳未満であることが加入条件となっています(※国民年金の保険料納付免除者などは加入できない場合があります)。

iDeCoに加入できるiDeCo掛金の上限額を計算する方法

企業型DC加入者がiDeCoに拠出できる金額は、「合算上限から企業型DCの掛金を引いた残り」が上限となります。ただし、iDeCo単体の上限額の範囲内という制約もあります。

計算例(確定給付型なし・企業型DC掛金が月2万円の場合)

iDeCo掛金の上限計算例
合算上限月額 5万5,000円
企業型DC掛金(事業主掛金)月額 2万円
差引残額月額 3万5,000円
iDeCo単体の上限月額 2万円
→ iDeCoに拠出できる金額月額 2万円(iDeCo上限が上限)

※上記はあくまで計算例です。実際のiDeCo掛金の上限は国民年金基金連合会の確認・審査を経て決定されます。

ポイント
企業型DC掛金が多いほど、iDeCoに回せる金額は少なくなります。自社の企業型DC掛金の金額を確認したうえで、iDeCoの掛金額を設定しましょう。

 

企業型DC加入中にiDeCoを始める手続きの流れ

実際にiDeCoを始める際の手続きの流れを確認しておきましょう。現行ルールでは会社への申請が不要になった分、手続きの多くは個人で完結できるようになっています。

STEP 1:金融機関(運営管理機関)を選ぶ

iDeCoの口座を開設する金融機関を選びます。証券会社・銀行・保険会社など多数の金融機関がiDeCoを取り扱っています。手数料の低さ・運用商品の品ぞろえ・使いやすさを基準に比較しましょう。

STEP 2:事業主証明書を会社に発行してもらう

iDeCoの加入申請には、在職中の会社が発行する「事業主証明書」が必要です。これは会社に依頼して発行してもらう書類で、企業型DCへの加入状況などが記載されます。2024年12月の改正後も、この証明書の取得は引き続き必要です。

STEP 3:加入申請書類を提出する

選んだ金融機関に、加入申込書と事業主証明書を提出します。書類は郵送またはオンラインで提出できる金融機関が増えています。

STEP 4:国民年金基金連合会の審査・口座開設

書類が受理されると、国民年金基金連合会による審査が行われます。審査完了後、iDeCo口座が開設され、掛金の拠出が開始されます(申請から口座開設まで通常1〜2ヶ月程度かかります)。

手続きの流れまとめ
①金融機関を選ぶ → ②会社に事業主証明書を依頼・取得 → ③加入申込書と合わせて金融機関に提出 → ④国民年金基金連合会の審査 → ⑤口座開設・拠出開始
(※手続きの詳細は金融機関・国民年金基金連合会にご確認ください)

 

企業型DCとiDeCoを併用するメリット

企業型DCに加えてiDeCoも活用することで、老後の資産形成をより厚くすることができます。主なメリットを整理します。

メリット①:掛金が全額所得控除の対象

iDeCoの掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象です。企業型DCの事業主掛金は会社が拠出するため個人の所得控除にはなりませんが、iDeCoは個人が拠出するため直接的な節税効果があります。

メリット②:運用益が非課税

iDeCoの運用益は、通常の口座で運用した場合に課税される約20%の税金がかかりません。長期運用ほど非課税メリットが大きくなります。

メリット③:受給時の税制優遇

60歳以降に受け取る際は、一時金として受け取ると退職所得控除、年金として受け取ると公的年金等控除の対象となり、受取時にも税制上の優遇が適用されます(※受取方法・金額・他の退職金との関係により課税額が異なります)。

こんな方は税理士への相談をおすすめします

企業型DCとiDeCoの併用を検討する際、特に以下のケースでは専門家への相談が有効です。

まず、マッチング拠出を利用中でiDeCoへの切り替えを検討している場合です。どちらが有利かは給与水準・会社の掛金額・運用方針によって異なるため、単純な比較だけでは判断が難しいことがあります。次に、確定給付型年金を併用している場合です。上限額の計算が複雑になるため、正確な上限額の確認が必要です。さらに、役員報酬の設計や退職金・相続対策と合わせて老後資産を検討したい場合も、全体最適を考えた設計が重要です。

まとめ:2024年改正で企業型DC×iDeCoの併用はより身近になった

この記事のまとめ
・2024年12月の改正後、会社規約なしで企業型DC加入者もiDeCoに加入可能(現行ルール)
・加入の3条件:①掛金合算が上限内・②マッチング拠出を利用していない・③iDeCo加入資格あり
・掛金合算上限は月額5万5,000円(確定給付型等との併用時は2万7,500円)
・マッチング拠出とiDeCoは従業員個人単位で二者択一(会社単位では共存可能)
・手続きは「金融機関選び→事業主証明書取得→申請→審査→口座開設」の順
・掛金は全額所得控除・運用益非課税・受取時も税制優遇と節税メリット大
(※各内容は2024年時点の制度に基づきます)

 

企業型DCとiDeCoの併用は、老後資産形成を加速させる有効な手段です。ご自身の状況に合った活用法を検討したい方は、ぜひ税理士へご相談ください。

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