企業型DCのシミュレーション|老後資金はいくらになる?

監修 税理士 有馬 誠治

「会社で企業型DCを導入したら、自分や従業員の老後資金はどれくらい増えるのか?」

「社会保険料の削減と節税、具体的にいくらメリットがあるのか数字で知りたい」

経営者として新しい制度を検討する際、最も気になるのは「具体的な数字」ではないでしょうか。

企業型DC(企業型確定拠出年金)は、単なる福利厚生ではなく、会社のキャッシュフロー改善と社長自身の資産形成を同時に叶える強力なツールです。

本記事では、企業型DCを導入した場合の「老後資金の受取額」や「節税・社会保険料削減効果」を徹底シミュレーションします。

iDeCoとの違いや、賢い商品の選び方まで、経営者目線で分かりやすく解説します。

企業型DC(企業型確定拠出年金)とは?シミュレーション前に知るべき基本

シミュレーションを行う前に、まずは企業型DCの仕組みを正しく把握しておきましょう。

企業型確定拠出年金(企業型DC)の仕組みと上限

企業型DCは、企業が掛金を拠出し、従業員(役員含む)が自ら運用商品を選んで資産を形成する年金制度です。

最大のポイントは、掛金が所得税・住民税の課税対象外となり、さらに(選択制の場合は)社会保険料の算定基礎からも外れるという点にあります。

掛金には上限(拠出限度額)が設定されています。

他の企業年金(確定給付企業年金など)がない場合
月額 55,000円

他の企業年金がある場合
月額 27,500円

 

この枠をいかに活用するかが、シミュレーションの結果を大きく左右します。

企業型DCとiDeCoの違いと併用ルール

よく比較されるiDeCo(個人型確定拠出年金)との大きな違いは「手数料の負担」と「社会保険料への影響」です。

手数料
企業型DCは原則として会社負担。iDeCoは自己負担。

社会保険料
企業型DC(選択制)は社会保険料を削減できるが、iDeCoは所得控除のみ。

 

2022年10月の法改正により、企業型DCとiDeCoの併用が容易になりました。

これにより、会社での積み立てに加えて個人でも上乗せすることが可能になっています。

※iDeCoの拠出上限は、企業型DCの会社掛金額に応じて個別に調整されます。

企業型DCの節税・資産形成シミュレーション【具体例】

それでは、具体的に「いくら得をして、いくら貯まるのか」を見ていきましょう。

社長個人の手取りアップと節税効果

例えば、40歳の経営者が毎月 55,000円を拠出した場合、60歳までの20年間でどのような差が出るでしょうか。

以下は、40歳の経営者が月5.5万円を拠出した場合の簡易シミュレーションです。

40歳経営者・月5.5万円拠出(20年間)の節税・資産形成シミュレーション
項目 企業型DCなし(預金) 企業型DCあり(運用利回り3%)
月間積立額 55,000円 55,000円
20年間の累計拠出額 1,320万円 1,320万円
20年後の受取見込額 1,320万円 約1,805万円
節税・保険料削減額(20年) 0円 約480万円(※)

※本シミュレーションは、所得税・住民税率を30%、社会保険料率を15%として算出しています。また、社会保険料削減効果は、給与を掛金に振り替える「選択制DC」を採用した場合に限られます。

注目すべきは、運用益だけでなく「出すだけで確定する節税・保険料削減メリット」です。

20年間で約480万円ものキャッシュが手元に残る計算になります。

これは、普通に役員報酬として受け取ってから貯金する場合には得られない「企業型DCならでは」の利益です。

従業員の受取額平均とシミュレーション

従業員(30代・年収400万円)が月額 20,000円を拠出した場合のシミュレーションです。

30年間の積立合計
720万円

3%運用時の受取額
約1,165万円

30年間の節税額
約144万円(所得税・住民税 20%想定)

 

「退職金なし」の中小企業であっても、企業型DCを導入することで、会社負担を抑えつつ従業員に1,000万円規模の老後資金準備の機会を提供できるのです。

会社側(法人)のメリット|社会保険料削減シミュレーション

経営者が最も注目すべきは、会社負担の社会保険料が安くなる点です。

企業型確定拠出年金で厚生年金保険料が減る仕組み

「選択制企業型DC」を導入すると、従業員は「給与として受け取る」か「掛金として積み立てる」かを選べます。

掛金として積み立てた分は「標準報酬月額」に含まれないため、会社が負担する社会保険料(厚生年金・健康保険など)の計算ベースが下がります。

会社負担手数料 vs 社会保険料削減額

「手数料がもったいない」という声をよく聞きますが、実際には削減額の方が大きくなるケースがほとんどです。

従業員10名が月2万円拠出した場合の年間収支

・会社の社会保険料削減額:年間 約45万円
・システムの運営管理手数料:年間 約12万円
年間の収支差:+33万円(利益増)

 

このように、福利厚生を充実させながら、実質的に会社のコストを削減できる稀有な制度といえます。

※手数料は金融機関・加入人数により異なります。

企業型DCのデメリットとリスクも正しく理解する

メリットばかりではありません。

経営者として把握しておくべき注意点があります。

60歳までの資金ロック(脱退一時金の制限)

原則として60歳まで引き出すことができません。

急な資金ニーズに対応できないため、生活防衛資金とは別に「余剰資金」で取り組むようアナウンスが必要です。

運用リスクと元本割れの可能性

運用はあくまで自己責任です。

元本確保型の商品もありますが、インフレリスクには弱くなります。

会社としては、投資教育の機会を提供し、従業員が「自分に合った商品」を選べる環境を整えることが重要です。

運用商品の選び方とおすすめ配分

「どの商品を選べばいいか分からない」という悩みに対して、年代別の考え方を紹介します。

20代・30代・40代のおすすめ配分

20代〜30代
運用期間が長いため、外国株式などの「株式型」をメインに。複利効果を最大化させます。

40代
株式をメインにしつつ、少しずつ債券を組み入れ、リスクをコントロールし始めます。

 

50代の配分とスイッチング戦略

50代
受取時期が近づいているため、暴落に備えて「元本確保型」や「債券型」の比率を高めます。

スイッチング
利益が出ている商品を売却し、安定資産に買い替える「利益確定」の作業が重要になります。

 

導入から運用開始までの流れと事務手続き

導入には通常6ヶ月程度の期間がかかります。

1. 制度設計・規約作成
厚生局への申請が必要です。

2. 従業員説明会の実施
制度のメリット・デメリットを周知します。

3. 運営管理機関の選定
三菱UFJ信託銀行や三井住友銀行など、多くの金融機関が提供していますが、事務手数料や商品ラインナップを比較して選びます。

 

当事務所のような専門家がサポートすることで、経営者の事務負担を最小限に抑えた導入が可能です。

企業型DCに関するFAQ(よくある質問)

Q. 企業型DCとDB(確定給付年金)の違いは何ですか?

A. DBは会社が将来の受取額を保証する制度で、運用リスクを会社が負います。一方、DCは掛金額を決定し、運用リスクは加入者(従業員)が負います。中小企業にとっては、将来の債務リスクがないDCの方が導入しやすい傾向にあります。

Q. 退職した時はどうなりますか?

A. 転職先に企業型DCがあれば移管できます。なければiDeCoに移管します。放置すると「自動移管」され、手数料だけ引かれるため注意が必要です。

Q. 役員一人だけでも導入できますか?

A. 厚生年金の被保険者がいれば可能です。

まとめ:シミュレーションから始める会社の財務改善

企業型DCは、正しくシミュレーションを行えば、会社にとっても経営者個人にとっても「プラスしかない」といえるほど強力な制度です。

社長個人の手取りを増やし、役員退職金を賢く積み立てる
会社の社会保険料負担を適正化し、利益率を向上させる
大手に負けない福利厚生で、優秀な人材の採用・定着を図る

 

まずは、貴社の場合にどれくらいの削減効果・資産形成効果があるのか、具体的な数字を出してみることから始めませんか?

当事務所では、税務と労務の両面から最適な企業型DCの導入をサポートしています。

複雑な規約作成や従業員への説明、税務上の処理まで一貫してお任せいただけます。

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