税務調査対象になる確率を解説。調査内容、頻度をわかりやすく解説

監修 有馬 誠治

「うちの会社は税務調査の対象になるのだろうか?」

福岡で事業を営む経営者や個人事業主の皆さんにとって、税務調査は漠然とした不安の種かもしれません。

特に、税務調査のニュースを聞くと、「自分たちのところにも来るのではないか?」と心配になるのは当然です。

この記事を読むことで、税務調査が実施される一般的な「確率」、そして「どのような基準で選定されるのか」という疑問を解消できます。

また、調査の具体的な「内容」や「頻度」についても分かりやすく解説します。

税務調査の対象になる「確率」はどれくらいか?

税務調査の「確率」は、企業の規模、業種、申告状況によって大きく変動するため、「何%」と断言することはできません。

しかし、国税庁が公表する統計から、大まかな傾向を掴むことができます。

重要なのは、「申告件数全体に対する実地調査件数」の割合を知ることです。

企業(法人)の税務調査の実施割合

国税庁の統計を見ると、法人に対する実地調査の実施割合は、全体で見ると決して高くはありません。しかし、調査はランダムではなく、明らかに申告漏れが多いと見込まれる法人に集中的に行われます。

調査対象 実施割合(目安) 調査の傾向
全法人 数%程度 すべての法人を調査するわけではないが、不正が見込まれる先には集中する。
大企業・高額所得法人 ほぼ毎回、または高い頻度 規模が大きいほど、調査頻度・深度が高まる傾向がある。
過去に不正があった法人 再調査の確率が極めて高い 一度「要注意」と判断されると、頻繁にチェックされる。

この表から分かる通り、「全く調査がない」ということではなく、「目をつけられたら確率が高まる」というのが実態です。

なお、福岡国税局管内では、令和5事務年度において資料情報等に基づく実地調査件数が2,801件と発表されています(出典:国税庁 福岡国税局 令和5事務年度実績)。

前年に比べてやや増加傾向にあり、福岡地域でも税務調査の重点化が進んでいることがわかります。

個人事業主の税務調査の実施割合

個人事業主の調査割合は、法人に比べてさらに低い傾向にありますが、「無申告」「簡易な方法で申告している事業者」に対する調査は年々厳しくなっています。

  • 無申告者: 調査は集中的に行われ、不正が発覚した際のペナルティ(加算税など)も重くなります。
  • 現金商売(飲食店、サービス業など): 現金の流れが把握しにくいため、売上除外がないか重点的に調査されやすい傾向があります。

規模が小さくても、売上が安定して伸びていたり、経費の割合が急に増えたりすると、対象に選定される可能性があります。

税務調査の対象となる企業の「選定基準」とは?

税務署は、限られたリソースの中で効率的に申告漏れを発見するため、独自の分析システムや情報網を駆使して調査対象を選定しています。

ここでは、その選定の主な基準について解説します。

税務調査で特に注目される「赤信号」のポイント5選

以下のいずれかに該当する場合、税務署からの注目度が格段に上がります。

  • 1.同業他社との比較で利益率が極端に低い: 統計データと比較し、売上や利益が不自然に低すぎる場合、売上除外や過大な経費計上を疑われます。
  • 2.売上や経費の計上が期末(決算月)に偏っている: 決算間際になって急に大きな取引や経費計上が集中している場合、意図的な利益調整を疑われます。
  • 3.大口の現金取引や使途不明金が多い: 資金の流れが帳簿上で明確に追えない現金取引や、事業との関連性が不明確な支出が多い場合。
  • 4.役員報酬や交際費、福利厚生費などが不自然に変動している: 特に、役員報酬の変更ルールを無視した修正や、個人的な費用を経費に含めている疑いがある場合。
  • 5.過去数年で業績が急激に変動した: 急な売上増加・減少の理由が、帳簿上の数字だけでは説明できない場合。

業種ごとの特性と税務署が着目しやすいポイント

業種 税務署の主な着目点
小売業
・飲食業
棚卸資産の計上漏れ、レジ操作による売上除外、私的な飲食代の混入。
建設
・不動産業
工事の進行基準、外注費の源泉徴収、架空の外注費、契約金の計上時期。
IT
・コンサルティング
業務委託費(外注費)の妥当性、サーバー費用の資産計上、役員報酬の適正性。

税務調査の「頻度」と周期は?前回調査から何年後に来る?

税務調査の「頻度」についても、確率と同様に明確なルールはありませんが、一般的な周期は存在します。

定期的な税務調査の一般的な周期

不正がない優良な企業や個人事業主の場合でも、概ね10年〜20年に一度程度は、申告内容を確認するための調査対象となる可能性があると言われています。

ただし、以下の要因によってこの周期は短くなります。

  • 業績が安定している/伸びている: 納税額が大きい企業は、税収確保の観点から定期的に調査対象になりやすいです。
  • 自社で申告を行っている(税理士関与がない): 税理士によるチェックが入っていない申告書は、誤りが含まれる可能性が高いと判断され、調査対象になりやすい傾向があります。

2回目以降の調査頻度が上がるケース

過去の税務調査で「重加算税(意図的な不正)」が課された場合や、多額の申告漏れが発覚した場合は、調査頻度が格段に上がります。

一度疑いの目を向けられると、3年〜5年という短い周期で再び調査が入ることも珍しくありません。

税務調査の具体的な「内容」と当日の流れ

税務調査の連絡が来てしまった場合でも、事前に調査内容を把握しておけば、必要以上に不安を感じる必要はありません。

ここでは「何が調べられるか」という内容に絞って解説します。

調査で必ず確認される「重要書類」リスト

調査で求められる主な書類 税務署の確認ポイント
総勘定元帳
・仕訳帳
各勘定科目の残高と取引内容の整合性、大口取引の相手先と金額。
請求書
・領収書
金額・日付・宛名の適正性、事業との関連性、架空経費の有無。
預金通帳
(法人口座・代表者口座)
帳簿と通帳の残高の一致、使途不明な入出金、公私混同の有無。
議事録
・契約書
役員報酬決定の経緯、取引先との契約内容、資金移動の根拠。
在庫リスト・棚卸表 期末の在庫計上の正確性、売上原価の過大計上を防ぐため。

税務署が特にチェックする「グレーゾーン」な取引

税務調査で否認されやすい項目、つまり税務署が最も注意深くチェックする「グレーゾーン」な取引についても知っておきましょう。

  • 売上除外・計上時期のズレ: 納品書や契約書の日付と売上計上日がズレていないか。特に期末の取引が厳しくチェックされます。
  • 私的な費用の経費化(公私混同): 代表者や従業員の個人的な飲食代、旅行代、趣味の品などを「会議費」や「福利厚生費」として計上していないか。
  • 架空の経費: 実際には発生していない外注費やコンサルタント料などを計上していないか。
  • 海外取引: 海外の企業や個人との取引、国外送金の記録についても厳しく確認されます。特に、取引実態が不明確な場合や、税務署が情報を得られない国・地域への送金は注意が必要です。

福岡で税務調査に備えるならプロの税理士に相談を

税務調査の「確率」はコントロールできませんが、「備え」はコントロールできます。

福岡で事業を営む皆様にとって、地域特有の商習慣や税務署の傾向を理解している税理士と顧問契約を結ぶことが、最も有効な対策となります。

税務調査対策を税理士にアウトソーシングするメリット

専門家である税理士に税務調査対策を依頼することには、以下のような大きなメリットがあります。

  • 1.精神的な負担の軽減: 税務署とのやり取りや当日の立ち会いをすべて税理士に任せられるため、経営者や従業員は本業に集中できます。
  • 2.適切な法解釈に基づく対応: 質問の意図を正確に把握し、税法に基づいた適切な説明を行います。これにより、不当な指摘や課税を防げます。
  • 3.追徴課税リスクの最小化: 調査前に申告内容の誤りを事前にチェック・修正できるため、調査後の追徴課税のリスクを最小限に抑えられます。

まとめ:不安を安心に変える税務調査対策

税務調査の「確率」や「頻度」に過度に振り回されるのではなく、いつ調査が来ても慌てないよう、日頃から準備を整えておくことが重要です。

今回の記事で解説した「選定基準」を参考に、日頃から「同業他社と比べて不自然な点はないか」「証憑類が適切に保管されているか」をチェックしてみてください。

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