企業型DCを会社で導入するメリットと注意点
「社会保険料の負担が年々重くなり、会社の利益を圧迫している……」
「大手に負けない福利厚生を整えて、優秀な人材を採用・定着させたい」
「自分(経営者)の老後資金を、会社の経費を使いながら効率よく積み立てたい」
会社を経営されている皆様、このような悩みをお持ちではありませんか?
2026年現在、少子高齢化に伴う社会保険料の上昇は避けられない課題です。
特に中小企業にとって、法定福利費の増加はキャッシュフローを直接的に圧迫する死活問題といえます。
その解決策として、今、経営者の間で急速に注目を集めているのが「企業型DC(企業型確定拠出年金)」です。
本記事では、企業型DCを導入することで「会社」「従業員」「経営者個人」の三者がそれぞれどのような実利を得られるのか。
また、導入後に後悔しないための注意点や、iDeCoとの決定的な違いについて、徹底的に解説します。
この記事を読み終える頃には、貴社にとって企業型DCが「単なる年金制度」ではなく、「最強の財務戦略・採用戦略」であることがお分かりいただけるはずです。
目次
企業型DC(企業型確定拠出年金)の基礎知識と今導入すべきメリット
企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、会社が掛金を拠出し、従業員(または役員)が自ら運用商品を選んで資産形成を行う制度です。
制度の全体像
これまでの日本には「確定給付年金(DB)」という、会社が将来の給付額を保証する制度が主流でした。
しかし、運用リスクを会社がすべて負うDBは、経営に大きな負担となります。
一方、企業型DCは「掛金額」を確定させ、運用結果は個人の自己責任とする制度です。
会社にとっては「将来の追加負担リスクがない」という大きなメリットがあります。
なぜ中小企業への導入が加速しているのか
かつて企業型DCは大企業向けの制度でした。
しかし、制度改正により数名の小規模法人でも導入できる「選択制DC」が登場したことで、ハードルが劇的に下がりました。
特に近年では、最低賃金の上昇や深刻な人手不足が続いています。
給与を上げたくても社会保険料の負担が重くて上げられない……。
そんなジレンマを解消する「戦略的福利厚生」として、企業型DCが選ばれているのです。
経営者が抱える「3つの悩み」を企業型DCが解決する
経営者の悩みは尽きませんが、特に以下の3点において企業型DCは特効薬となります。
悩み①:利益が出ても「社会保険料」で持っていかれる
利益を従業員の給与に反映させようとすると、会社負担の社会保険料もセットで膨らみます。
企業型DC(特に選択制)を導入すれば、掛金分は社会保険料の算定基礎から外れるため、会社側の法定福利費を抑制しながら、実質的な従業員の資産を増やすことが可能です。
悩み②:求人を出しても「大手企業」に勝てない
「給与水準が同じなら、福利厚生が整っている方へ」というのが求職者の本音です。
企業型DCは、iDeCo(個人型)よりも税制優遇が手厚く、口座管理手数料も会社負担となるため、従業員にとって非常に魅力的な制度です。
求人票に「確定拠出年金あり」と記載できることは、採用市場における強力な武器になります。
悩み③:社長自身の「老後資金」が心もとない
中小企業の社長は、従業員の給与を優先するあまり、自身の退職金準備が後回しになりがちです。
企業型DCを活用すれば、「役員向けDC掛金の損金算入」+「社会保険料削減」+「運用益非課税」というトリプルメリットを享受しながら、効率的に数千万円規模の引退資金を準備できます。
【会社側のメリット】社会保険料削減と財務体質の改善
経営者視点での具体的な実利を、さらに詳細に掘り下げます。
社会保険料(法人負担分)の削減メカニズム
企業型DCの掛金は「給与」とはみなされません。
そのため、厚生年金・健康保険・介護保険などの計算の元となる「標準報酬月額」が下がります。
- 具体例: 従業員が月額20,000円を掛金にした場合
- 会社側のメリット: 社会保険料の法人負担分(約15%)である「月3,000円(年36,000円)」が削減されます。
- 10人の従業員が加入すれば: 年間で約36万円の固定費削減になります。
※健康保険料率は都道府県・協会けんぽで異なる
これは「1回限りの節税」ではなく、制度が続く限り毎年発生する利益です。
10年続けば360万円の差が生まれます。
法人税の節税とキャッシュフローの最適化
会社が拠出する掛金は、全額が「損金」となります。
役員退職金を準備するために生命保険を活用する手法もありますが、解約返戻率や税務リスクを考慮すると、企業型DCの方が透明性が高く、確実に損金計上できるメリットがあります。
社員のマネーリテラシー向上による経営の安定
「お金の不安」を抱えている従業員は、仕事への集中力が削がれがちです。
企業型DCを通じて資産運用の知識を身につけることは、従業員の自律を促します。
【経営者・従業員のメリット】手取り最大化と資産形成
加入者個人が受ける恩恵は、通常の投資(NISAなど)を上回る部分が多くあります。
「所得税・住民税」がその場で安くなる
通常の給与として受け取ると、所得税(5%〜45%)と住民税(10%)が引かれます。
しかし、企業型DCの掛金にした分は、最初から「なかったこと」として税金計算がなされます。
【表1:年収別・手取り改善シミュレーション(月2万円積立の場合)】
| 年収 | 所得税率 | 年間の節税・社保削減額(目安) | 30年間の累計メリット |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 5% | 約6.5万円 | 195万円 |
| 500万円 | 10% | 約8.2万円 | 246万円 |
| 800万円 | 23% | 約10.5万円 | 315万円 |
| 1,200万円 | 33% | 約13.2万円 | 396万円 |
※社会保険料等級の変動や諸条件により異なります。
このように、預金や通常の積立投資をする前に、「企業型DCの枠」を使い切る方が圧倒的に効率的です。
運用益がすべて「非課税」
通常、投資で得た利益には約20.315%の税金がかかります。
しかし、企業型DC内での運用益は非課税です。
- 想定: 30年間、年利3%で運用した場合。
- 元本: 720万円(月2万円 × 360ヶ月)
- 運用益: 約445万円
- 非課税メリット: 本来引かれるはずの約90万円の税金がゼロになります。
受け取り時の最強の優遇「退職所得控除」
60歳以降に一時金として受け取る際、企業型DCの資金は「退職金」として扱われます。
日本の税制において、退職金は最も優遇されています。
控除額の例: 勤続30年の場合、1,500万円まで非課税です。
これを「年金」として分割で受け取る場合も「公的年金等控除」が適用され、税負担を極めて低く抑えられます。
企業型DC導入の注意点と「よくある失敗例」
「良いことばかり」に見えますが、中小企業の現場ではトラブルが起こることもあります。
先回りして対策を打ちましょう。
「60歳まで引き出せない」ことへの不満
従業員の中には「今の手取りを1円でも多くしたい」と考える人もいます。
- 失敗例: 制度を強制導入した結果、若手社員から「生活が苦しくなった」と苦情が出る。
- 対策: 「選択制DC」を導入しましょう。従業員が「給与として受け取るか、掛金にするか」を自分で選べるようにすれば、不満は解消されます。
運用商品の説明不足
- 失敗例: 会社が導入しただけで放置した結果、全員が「元本確保型(定期預金)」を選び、物価上昇(インフレ)に負けて実質的に資産が目減りしてしまう。
- 対策: 導入時にしっかりとした投資教育(セミナー)を行うことが義務付けられています。当事務所では、加入者向けのわかりやすい説明会もサポートしています。
事務負担の増加
- 注意点: 毎月の掛金の管理や、入退社時の手続きなどの事務作業が発生します。
- 対策: 信頼できる運営管理機関(JIS&Tなど)のシステムを活用し、税理士事務所と連携することで、総務担当者の負担を最小限に抑える設計が可能です。
【徹底比較】企業型DC vs iDeCo(個人型)
「うちの会社にはiDeCoがあるから、企業型DCは不要では?」という質問に対する、プロの回答です。
両制度は似ているようで、経営者・法人視点では決定的な違いがあります。
【表2:経営者が知っておくべき決定的な違い】
| 比較項目 | 企業型DC | iDeCo(個人型) |
|---|---|---|
| 社会保険料の削減 | あり(会社も得をする) | なし(本人のみ節税) |
| 拠出上限(月額) | 最大55,000円 | 最大23,000円(※) |
| 手数料の負担 | 会社負担(損金になる) | 本人負担(手取りから支払う) |
| 加入の手間 | 会社がまとめて実施 | 本人が金融機関を探して契約 |
| マッチング拠出 | 可能(給与から上乗せ) | 不可 |
(※企業年金がない会社員の場合。2024年12月の改正で上限ルールが複雑化しています)
経営者の視点で見れば、「法人負担の社保を削れる」のは企業型DCだけです。
また、上限額が2倍以上違うため、役員の引退資金準備としては企業型DC一択といえます。
よくある質問:中小企業の経営者からよく寄せられる10の質問
現場でよく聞かれる疑問に、包み隠さずお答えします。
Q1. 従業員が1名でも導入できますか?
はい、可能です。
社長お一人の法人でも導入し、節税メリットを享受されているケースは多々あります。
Q2. 導入費用はいくらくらいかかりますか?
金融機関によりますが、初期費用で数万円〜、月額の手数料は加入者1人あたり数百円程度です。
削減できる社会保険料で十分に元が取れる設計が可能です。
Q3. すでに「中退共(中小企業退職金共済)」に入っていますが、併用できますか?
併用可能です。
中退共は「会社が全額負担」、企業型DCは「従業員が給与から出す(選択制)」と使い分けることで、より手厚い福利厚生を実現できます。
Q4. 会社が赤字の年でも掛金を払い続けなければなりませんか?
「選択制DC」であれば、掛金の原資は従業員の給与(振り替え)ですので、会社の業績に関わらず継続可能です。
会社が追加拠出するプランの場合は、規程の見直しが必要になることがあります。
Q5. パートやアルバイトも加入させる必要がありますか?
厚生年金の被保険者であれば加入対象にするのが基本ですが、一定の条件(勤続年数など)を設けて設計することも可能です。
Q6. 社長が60歳を過ぎていても導入する意味はありますか?
現在は65歳(または70歳)まで加入可能なプランが増えています。
数年間の運用でも、所得税・住民税の節税効果は非常に大きいため、検討の価値は十分にあります。
Q7. 従業員が辞めるとき、積み立てたお金はどうなりますか?
本人の資産として、転職先の企業型DCやiDeCoに「持ち運び(ポータビリティ)」が可能です。
会社に返還されるものではありません。
Q8. 倒産した場合、積み立てたお金は差し押さえられますか?
いいえ。
企業型DCの資産は信託銀行で分別管理されており、受給権が保護されています。
会社が倒産しても、従業員や社長が積み立てた資産は守られます。
Q9. 運用商品はどれくらいの中から選べるのですか?
通常、15〜35種類程度の厳選された投資信託や定期預金から選べます。
多すぎて選べないという方のために、ターゲット・イヤー・ファンドなどの便利な商品も用意されています。
Q10. 結局、一番のメリットは何ですか?
経営者にとっては「合法的に社会保険料を安くし、自分と社員の手取りを増やす唯一の公的制度」であることです。
福岡での導入フローと成功のポイント
導入を成功させるためには、単に書類を出すだけでなく、社内の合意形成が重要です。
- 1. 詳細シミュレーション(1ヶ月目)全従業員の年収に基づき、会社と個人の削減メリットを1円単位で算出します。
- 2. 制度設計(2ヶ月目)貴社の就業規則や賃金規定に合わせた最適なプランをオーダーメイドで作成します。
- 3. 従業員への周知と投資教育(3ヶ月目)「なぜ会社がこの制度を入れるのか」という想いを伝える説明会を実施します。
- 4. 当局への申請(4ヶ月目以降)厚生局への届出など、煩雑な事務作業は専門家にお任せください。
まとめ:企業型DCは「経営の質」を変える投資
企業型DCは、単なる「年金」ではありません。
- ・会社の固定費(社会保険料)を削減し、キャッシュフローを改善する。
- ・経営者個人の資産を、最も税負担の少ない形で最大化する。
- ・優秀な人材が「この会社で長く働きたい」と思う環境を作る。
これらは、変化の激しい現代において、福岡の中小企業が生き残るための「攻め」と「守り」の戦略そのものです。
福岡・博多での企業型DC導入支援は有馬税理士事務所へ
全国1,000社超の実績を持つ「SOKEI DC Alliance」と連携し、企業型DCの導入から税務・社会保険料最適化までトータルサポートいたします。
「社会保険料削減額の試算が知りたい」
「役員報酬の節税対策を強化したい」
「従業員への説明が不安で導入を躊躇している」
このようなお悩みをお持ちの方は、以下のリンクより無料相談ください。
貴社の規模・状況に応じた最適プランをご提案いたします。