税務署は何をチェックしている?税務調査のポイント| 福岡版

監修 有馬 誠治

「税務調査」と聞くと、身構えてしまう福岡の企業経営者や個人事業主の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、「税務署は何をチェックしているのか?」という皆さんの疑問を解消し、調査を必要以上に恐れることなく、万全の体制で臨むためのポイントを分かりやすく解説します。

この記事を読むことで、税務調査の具体的なチェック項目と必要な準備が明確になり、不安を解消して本業に集中できるようになるでしょう。

はじめに:なぜ税務調査の「チェックポイント」を知るべきなのか?

税務調査は、決して「悪いこと」をした企業だけに入るものではありません。

日本の税制では、納税者自身が税金を計算して申告する申告納税制度を採用しており、税務署はそれが適正に行われているかを確認する立場にあるからです。

しかし、チェックされるポイントを知っておけば、日頃からリスクの低い経理体制を構築できます。

これは、結果的に追徴課税のリスクを減らし、無駄な時間や労力を削減することにつながります。

この記事では、特に税務署が重視するポイントを絞り込み、福岡の事業者の皆さまがすぐに行動に移せるように解説します。

税務調査の基本:税務署の「目的」と「流れ」

まず、税務調査に対する漠然とした不安を解消するために、その基本的な目的と流れを理解しておきましょう。

税務調査の目的は「適正申告の確認」と「不正防止」

国税庁の基本スタンスは、納税者が法律に基づいて正しく納税しているかを確認することです。

もし誤りがあれば適正な金額に是正し、意図的な不正があれば厳しく対処することで、他の納税者との公平性を保ち、全体の納税意識を高めることを目的としています。

事前準備から終了までの標準的な流れ

税務調査は一般的に、以下のステップで進められます。

流れを把握しておくだけでも、心理的な負担が軽減されます。

ステップ 内容 主なアクション
1. 調査の事前通知 税務署から電話で調査の目的、日時、場所などの連絡が入ります。 必ず税理士に相談し、日程調整を依頼する。
2. 準備・資料収集 税理士と打ち合わせを行い、調査官に提出する資料(過去3年分の帳簿、請求書、領収書など)を整理・準備します。 過去の申告内容に問題がないか事前チェックを行う。
3. 実地調査 調査官が事務所などを訪問し、帳簿や現物を確認し、経営者や経理担当者に質問を行います。
期間は通常1〜3日。
質問には税理士同席のもと、正確かつ簡潔に答える。
4. 調査結果の説明・指摘 調査で誤りが見つかった場合、その内容と追徴税額の説明があります。 税理士とともに指摘事項を精査し、納得できない点は反論する。
5. 修正申告・納税 指摘を受け入れた場合、修正申告書を提出し、不足分の税金を納めます。

税務署が必ずチェックする「最重要ポイント」5選

税務署は、過去の事例や業界の傾向から「誤りが生じやすい項目」「売上操作が行われやすい項目」を重点的にチェックします。

特に福岡の中小企業や個人事業主に共通する、見落としがちな最重要ポイントを解説します。

1. 売上・利益の計上漏れがないか:前年比・同業他社比較

税務調査において、最も厳しい目で確認されるのが「売上の計上漏れ」です。

・チェックされる視点:

  • – 売上が前年や前々年と比較して急激に変動していないか。変動している場合、その理由(証拠資料)は明確か。
  • – 同業他社と比較して利益率や粗利率が異常に低くないか。低い場合、コスト構造のどこに問題があるのか。
  • – 期末間際の売上が翌期に繰り延べられていないか(期ずれ)。
  • – 高額な請求書や入金があるにもかかわらず、それが売上に正しく計上されているか。

 

特に建設業やIT業など、期をまたぐプロジェクトが多い業種は「期ずれ」の指摘を受けやすいので注意が必要です。

2. 架空経費や私的経費の混入がないか:高額な経費や使途不明金

経費処理は、経営者が私的な支出を紛れ込ませやすい部分です。

税務署は、その経費が本当に事業に必要なものだったのか(業務遂行との関連性)を徹底的に調べます。

・特に注意が必要な経費の例:

  • – 交際費: 個人的な飲食費と混ざっていないか、領収書の裏に「誰と、いつ、どこで、何の目的で」が明確に記載されているか。
  • – 旅費交通費: 社員旅行や出張が、福利厚生や業務として適正な範囲か。家族旅行と見なされないか。
  • – 消耗品費: 高額な物品(ブランド品、高級家具など)が事業に不可欠なものとして計上されていないか。

3. 在庫(棚卸資産)や固定資産の計上と評価は適正か

期末の在庫を過少に計上したり、固定資産の除却(廃棄)を早めに行ったりすることで、利益を圧縮しようとするケースがあります。

・チェックされる視点:

  • – 棚卸表に記載された在庫の現物確認が行われることがあります。帳簿と実在庫が一致しているか。
  • – 償却資産(機械装置、車両など)が事業に使われなくなったとして除却されている場合、その証拠(売却証明書、廃棄証明書)があるか。

4. 現金・預金の残高と帳簿残高の整合性

現金取引が多い業種(飲食店、小売店、美容室など)は、「現金実査」が行われる可能性があります。

・チェックされる視点:

  • – 金庫やレジの現金残高が、帳簿上の残高とぴったり一致しているか。
  • – 預金通帳に記載された不明な入金・出金がないか。特に経営者個人の口座と事業用口座の資金移動は、借入金・貸付金として適正に処理されているか。

5. 源泉徴収義務の履行状況(役員報酬、外注費など)

本来、給与や報酬を支払う際に差し引かなければならない源泉所得税が、正しく徴収・納付されているかを確認します。

・見落としがちなポイント:

  • – 個人事業主への外注費(デザイン、ライティング、講演料など):これらの報酬は源泉徴収の対象になることが多いにもかかわらず、見落とされがちです。
  • – 税理士や弁護士への報酬:源泉徴収されているか。

【福岡版】地域特有の傾向と税務調査の成功事例・失敗事例

福岡は、飲食業やサービス業、建設業など、現金取引が発生しやすい業種が盛んな地域です。

そのため、税務署の調査も「現金の流れ」や「架空経費」に特に注意を払う傾向があります。

福岡の企業・個人事業主が注意すべき業種・傾向

・建設業・一人親方: 外注費として計上している支出が、実態として給与(源泉徴収が必要)ではないか。資材費の水増しがないか。

・飲食業・小売業: レジの記録と帳簿の売上が一致しているか。レジを通さない裏金がないか。

・IT・コンサルティング業: 業務委託費が実質的な役員報酬と見なされないか。

成功事例:専門家を起用し、追徴課税を最小限に抑えたケース

ある福岡のサービス業A社は、売上の一部に「期ずれ」の指摘を受けました。

・失敗の可能性: 自社だけで対応した場合、調査官の指摘をすべて受け入れ、過大な修正申告を迫られる可能性がありました。

・成功への転換: 弊社のような税務調査に強い税理士が同席し、指摘された根拠資料を精査。

 

結果、A社の主張を明確な証拠(契約書や業務完了報告書など)とともに提示することで、指摘額の約3分の1にまで減額させることに成功しました。

専門家を入れることで、「指摘のすべてが正しいわけではない」ことを主張でき、不当な追徴課税から会社を守ることができるのです。

税務調査に「慌てず」備えるための具体的準備(チェックリスト)

税務調査は、日々の経理の積み重ねが結果を左右します。いざという時に慌てないための具体的な準備をお伝えします。

日常的な経理体制の点検項目

証憑書類の整理 請求書、領収書、契約書は日付順に整理し、すぐに取り出せる状態か。 証憑の「紛失」は脱税を疑われるリスクを高めます。
通帳との整合性 毎月の入出金について、帳簿上の処理と根拠資料が紐付いているか。 使途不明金がないか、毎月確認する習慣をつけましょう。
役員報酬の適正性 役員報酬が定期同額給与として正しく処理されているか。 利益操作と見なされないよう、特別な変更がないか確認が必要です。

連絡が来た際の最初の3ステップ

万が一、税務署から調査の連絡が来たら、以下の3ステップを冷静に実行してください。

1.税務署の担当者名、連絡先、調査の目的・日時を正確にメモする。

2.安易に日程を確定せず、「日程調整のため、こちらから折り返す」と伝える。

3.すぐに顧問税理士(または税務調査を依頼したい税理士)に連絡する。

 

税理士は、納税者の代理人として調査官と折衝する権限を持っています。

調査の初期段階から専門家のサポートを得ることで、調査官のペースに乗せられることなく、冷静に対応できます。

まとめ:税務調査の不安を解消し、本業に集中するために

福岡で事業を営む皆様にとって、税務調査の不安は大きな経営リスクの一つです。

この記事で解説したように、税務署がチェックするポイントは多岐にわたりますが、要は「事業に必要な支出だったか」「売上は全て計上されているか」という2点に尽きます。

日常の経理を適正に行い、万が一の際には税務調査のプロフェッショナルを味方につけること。

これこそが、税務調査を乗り切り、不安を解消して本業に集中するための最善策です。

私たちが、貴社の税務調査における不安を解消し、適切な準備と対応をサポートします。

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