税務調査は怖くない!〜事前の準備と心構え | 福岡版

監修 有馬 誠治

「税務調査」と聞くと、身構えてしまう企業経営者や個人事業主の方は少なくありません。

特に初めての経験となれば、「何か不正を疑われているのでは?」「追徴課税をされるのでは?」と不安になるのは当然です。

この記事は、福岡にお住まい、または事業を展開されている皆さまが、税務調査を不必要に恐れることなく、万全の体制で迎えられるよう、
事前の準備と心構えについて専門的すぎない言葉で徹底的に解説します

この記事を読むことで、税務調査の全体像を理解し、今日からできる具体的な対策を講じ、不安を解消していただくことを目指します。

税務調査の「怖い」イメージはなぜ生まれる?その誤解を解く

税務調査が「怖い」というイメージは、ニュースで報じられる「脱税」のイメージや、「税務署は厳しい」という漠然とした印象から生まれていることがほとんどです。

しかし、まずはその誤解を解くことから始めましょう。

税務調査の本来の目的とは?

税務調査の本来の目的は、「脱税を発見すること」だけではありません。

最も大きな目的は、納税者が提出した確定申告の内容が、
税法に基づいて正しく計算されているかを確認することです。

つまり、税務調査は、納税者と税務署が申告内容についてお互いに確認し合う、
「申告是認(申告が正しいと認めること)」のための手続きでもあるのです。

不備があれば指摘を受けますが、多くの場合は意図的な不正ではなく、経理処理の誤りや認識のズレによるものです。

「脱税」と「誤り(申告漏れ)」の違いを知る

ここで重要なのが、「脱税(意図的な不正)」と「申告漏れ(誤り)」の違いです。

脱税と申告漏れの違い
項目 脱税(意図的な不正) 申告漏れ(誤り)
目的 意図的に税金を免れようとする 経理知識不足、誤認などによるミス
追徴課税 重加算税(最も重いペナルティ)が課される 過少申告加算税などが課される
割合 税務調査全体の件数から見るとごく一部 大部分の指摘事項がこれにあたる

真面目に事業を営んでいる皆さまの税務調査は、ほとんどが後者の「申告漏れ」に関する確認です。

意図的な不正がない限り、過度に恐れる必要はありません。

税務調査の連絡が来る前に!今すぐ始めるべき「3つの事前準備」

税務調査は、いつ連絡が来るかわかりません。しかし、事前に準備を徹底しておけば、連絡が来た際も慌てずに済みます。

他の経営者と差をつけるために、今日からできる3つの事前準備を始めましょう

準備1:日々の「帳簿・証憑」を完璧に整理・保存する

税務調査で真っ先にチェックされるのが、日々の取引の記録とそれを裏付ける証拠(証憑:領収書、請求書など)です。

帳簿の整合性
売上や経費の計上時期、金額が、通帳や請求書とズレていないか確認しましょう。

 

証憑の整理
領収書や請求書は、日付順や費目別にファイリングし、いつでもすぐに提示できる状態にしておくことが基本です。
特に、電子帳簿保存法の改正を機に、電子データでの保存ルールも再確認してください。

 

帳簿や証憑がきちんと整理されているだけでも、「この会社は日頃から適正に処理を行っている」と調査官に良い印象を与えることができ、調査がスムーズに進むことが多いです。

準備2:「社長のポケット」のお金を明確に分ける

中小企業や個人事業主の方にありがちなのが、事業用とプライベートの区別が曖昧になっているケースです。

事業用と個人用の口座を完全に分ける
これが基本中の基本です。

 

プライベートな支出を事業の経費に混ぜない
特に、私的な飲食費や生活費を経費として計上していないか、定期的に確認しましょう。

 

私的な支出が混入していると、調査官は「他にも隠れた経費があるのでは?」と疑念を持ち、調査範囲が広がる原因になります。

「社長のポケット」のお金は厳密に分け、事業に関係のない支出は経費にしない姿勢が重要です。

準備3:顧問税理士と調査時の「シミュレーション」を行う

税務調査対策において、顧問税理士の存在は欠かせません。

もし、まだ税理士と顧問契約を結んでいない、または現在の税理士が税務調査対応に消極的な場合は、福岡の地域事情に精通した税理士へのアウトソーシングを検討する絶好の機会です。

調査の連絡が来る前に、顧問税理士と以下のシミュレーションをしておきましょう。

調査時の対応ルール確認
「調査官の質問には、すべて税理士が回答する」など、当日誰がどのように対応するかを決めておく。

 

調査の連絡が来る前に、顧問税理士と以下のシミュレーションをしておきましょう。

過去の申告内容の最終チェック
税理士に決算書や帳簿を改めて確認してもらい、調査で指摘されそうなポイントを事前に洗い出し、修正すべきところは修正しておく。

 

事前準備こそが、税務調査を恐れず迎える最大の武器となります。

税務調査当日に動じないための「心構え」と「応対のポイント」

万が一、税務調査の連絡が来ても、事前の準備があれば動じる必要はありません。調査当日を迎える際の心構えと具体的な応対のポイントをお伝えします。

心構え1:「誠実な態度」で臨むことが最良の策

調査官も人間です。高圧的な態度で接したり、明らかに不誠実な対応をしたりすると、調査官の心証を悪くし、より厳しい目で調査されることになりかねません。

質問には正直に
聞かれたことには正直に、明確に答えましょう。

 

過度にへりくだらない:毅然とした態度は必要ですが、あくまでも「事実に基づき、誠実に」対応することが大切です。

調査官への印象は、調査の進行スピードと深さに影響を与えます。

心構え2:調査官の質問は「税理士を経由」して答える

税務調査の当日、調査官の質問に対し、経営者や経理担当者が誤った情報や不確実な情報を伝えてしまうと、それが新たな疑問や誤解を生み、調査を長期化・複雑化させる原因になります。

税理士に立ち会いを依頼していれば、原則として調査官の質問には税理士が対応します。

専門的なことは任せる
法律的な解釈や複雑な経理処理に関する質問は、すべて税理士に任せましょう。

 

判断に迷う質問は保留
「すぐには答えられないので、確認して後日改めてお答えします」と伝え、安易に即答しないことが重要です。

 

【実例ベース】調査で「問題なし」と判断された会社の共通点

私が過去にサポートした企業や個人事業主で、「申告是認(問題なし)」で調査を終えた方々には、共通点がありました。

 

  • ・事業用と個人用の金銭管理が完全に分離されていた。
  • ・売上や契約書など、重要な証憑が整理され、すぐに提示できた。
  • ・調査官に質問された際、「すぐに顧問税理士に確認します」と安易な即答を避けた。

 

これらの事例が示すように、日々の地道な準備と、専門家である税理士を頼る適切な対応こそが、税務調査をスムーズに終わらせるための鍵なのです。

福岡で税務調査対策を検討中の方へ

税務調査対策は、事業の信頼性を守るための重要な経営戦略です。

特に、地元の税務署の傾向や地域独自の商習慣を理解している福岡に拠点を置く税理士事務所へのアウトソーシングは、最も効果的な対策と言えます。

税務調査対策こそ税理士へのアウトソーシングが鍵

税理士に税務調査対策をアウトソーシングするメリットは多岐にわたります。

 

  • ・精神的負担の軽減:経営者が調査のプレッシャーから解放され、本業に集中できます。
  • ・専門的交渉:法的な根拠に基づき、調査官と対等に、時に有利に交渉を進められます。
  • ・追徴リスクの最小化:申告前のチェック、当日の立ち会い、その後の修正申告までをサポートし、税金やペナルティのリスクを最小限に抑えます。

 

「税務調査は税理士に任せる」という判断こそが、最も賢明な事前準備の一つです。

まとめ:税務調査は正しく恐れ、正しく備えよう

税務調査は、決して恐れるべきものではありません。

正しく恐れる:意図的な不正がなければ過度な心配は不要です。「申告漏れ」の指摘は、確認と是正の機会だと捉えましょう。

正しく備える:「帳簿・証憑の完璧な整理」と「公私のお金の明確な分離」という、今日からできる3つの事前準備を徹底してください。

税理士を頼る:福岡の地域事情に詳しい税理士をパートナーに選び、万全の体制を築きましょう。

 

万が一、税務調査の連絡が来ても、焦らず、まずは信頼できる税理士に相談することから始めてください。あなたの事業の成功を心から応援しています。

NEXT
税務調査の連絡が来たら、まず何をすべきか?