無申告はどうバレる?税務署が把握する仕組みと調査リスクの実態| 福岡版

監修 有馬 誠治

「少しの売上なら申告しなくても大丈夫だろう」「税務署に私の収入は分からない」—このように考えている個人事業主や経営者は少なくありません。

しかし、現代において、税務署はあなたが思っている以上に、正確かつ網羅的に事業や個人の収入情報を把握しています。

この記事では、無申告が「どうして、どんなタイミングでバレるのか」という税務署の情報把握の仕組みを具体的に解説します。

福岡で事業を営むあなたが、無申告の恐ろしさと、今すぐ取るべき行動を理解するきっかけとなることを目指します。

1. 税務署があなたの収入を把握する3つの仕組み

税務署は、申告書の内容だけで税務調査の対象を選定しているわけではありません。

実は、納税者本人が申告する前から、多くの情報は税務署に集約されています。

仕組み1:第三者からの情報(法定調書・支払調書)

無申告が発覚する最も一般的なルートは、「第三者からの情報」です。

事業者が誰かにお金を支払った際、その情報(誰に、いくら支払ったか)を税務署や市区町村に提出することが義務付けられています。

特に以下の書類は、支払側から税務署や市区町村へ提出され、あなたの収入を把握する基になります。

  • ・支払調書:外注先やフリーランスへの報酬、不動産の賃料、士業への報酬などの支払い情報。提出義務は支払内容や金額によりますが、高額な取引は税務署に届いています。
  • ・給与支払報告書:従業員や役員に支払った給与の情報。(提出先は原則市区町村ですが、この情報が税務署の情報と突合されます。)
  • ・配当等支払調書:株式の配当金などの情報。

あなたが「報酬」を受け取った場合、その報酬を支払った側の企業や個人が税務署や市区町村に情報を提出していることが多く、この情報とあなたの申告書がない(=無申告)という事実が照合されることで、発覚します。

仕組み2:国税総合管理システム(KSKシステム)による情報突合

税務署が収集した上記すべての情報は、国税総合管理システム(KSKシステム)と呼ばれる巨大なデータベースで一元管理されています。

KSKシステムは、法定調書や各種申告書、過去の調査情報などを自動で突合(マッチング)させ、「申告されている情報」と「外部から入ってきた情報」の間に大きなズレがないかを瞬時にチェックします。

このシステムによって、無申告者は自動的に高リスクなチェックリストに上がります。

仕組み3:金融機関や不動産登記の情報連携

税務署は、必要に応じて銀行や証券会社などの金融機関、あるいは法務局から情報を入手する権限を持っています。

  • ・高額な入出金:銀行口座に多額の入金があった場合、その資金源(収入源)を疑われます。
  • ・不動産の購入:申告所得が少ないにもかかわらず、高額な自宅や不動産を現金一括で購入した場合、税務署は「この資金はどこから来たのか?」と不審に思い、調査のトリガーとなります。

「無申告」が税務調査に発展しやすい具体的なケース

無申告者がすべて同時に調査されるわけではありません。

税務署は以下のポイントに着目し、「不正が確実に見つかる」と判断したターゲットを絞り込みます。

ケース1:過去に申告していたが、突然「無申告」になった

数年前まで確定申告をしていた人が、何らかの理由で申告をやめた場合、税務署は「廃業したのか?」「単なる申告忘れか?」「意図的な無申告か?」を把握するため、真っ先に調査対象とする傾向があります。

過去データがある分、収入の変動や事業の継続性が明確だからです。

ケース2:現金商売で高額な資産移動があった

飲食店、美容室、小売店など、現金取引の割合が高い業種は、もともと不正が疑われやすい業界です。

さらに、社長や事業主が多額の自動車や不動産、あるいはブランド品などを購入した場合、「申告していない収入を生活費に回しているのではないか」と判断されます。

ケース3:特定の情報提供者(タレコミ)があった

稀なケースではありますが、内部告発(従業員、元従業員)や取引先、近隣住民などからの情報提供(タレコミ)によって無申告が発覚することもあります。

タレコミ情報には具体性があることが多く、税務署はこれを重要な情報として扱います。

無申告がもたらす最悪の事態:調査リスクと重いペナルティ

無申告が税務調査によって発覚した場合、単純に税金を納めるだけで済まない、非常に重いペナルティが課されます。

リスク1:調査対象期間が最長で7年に長期化する

通常の税務調査は、原則として過去5年分が対象となりますが、無申告は「意図的な不正の疑い」が強いと判断され、最長で過去7年間までさかのぼって調査されることになります。

7年分の帳簿や証憑を準備する負担は非常に大きくなります。

リスク2:無申告加算税と重加算税が課される

無申告が発覚した場合、本来納めるべき税金(本税)に加え、「罰則金」である無申告加算税が課されます。

さらに、意図的な所得隠しと判断された場合、無申告加算税に代わって重加算税(最も重いペナルティ)が課されます。

ペナルティの種類 追徴税額に対する税率 適用されるケース
無申告加算税 自主申告で5%に軽減。
税務調査の通知後は15%〜20%
(納付額によって変動)。
申告期限を過ぎてから申告した場合
重加算税 40% 事実を仮装・隠蔽し、意図的に無申告だった場合

リスク3:推計課税の適用と社会的な信用の失墜

帳簿や証拠書類が一切ない無申告者の場合、税務署は推計課税(過去の申告額や同業他社の状況などから、収入を推測して税額を決定すること)を行うことがあります。

推測で税額を決められるため、実態よりも過大な税金が課されるリスクがあります。

また、追徴課税の額が大きい場合は社会的に報道されるリスクや、金融機関からの信用を失い融資を受けられなくなるなど、事業継続に関わる深刻な信用問題に発展します。

福岡で無申告状態を今すぐ解消し、安心を得るための行動

無申告状態を放置しておくことは、事業にとって最も大きなリスクです。

税務署から指摘を受ける前に、以下の行動をとりましょう。

自主的な「期限後申告」の重要性

税務署からの連絡を待つのではなく、自主的に期限後申告を行うことが非常に重要です。

自主的に申告した場合、無申告加算税が原則として5%に軽減されます。

これは、税務署の調査通知後(15%〜20%)に指摘を受ける場合と比べて、ペナルティの額に大きな差が出ます。

税理士に相談する最大のメリット

無申告の場合、過去の資料がない、記帳方法が分からないなど、複雑な問題を抱えていることがほとんどです。

福岡で無申告問題を抱えている方は、すぐに税理士にご相談ください。

  • ・過去の再構築:過去数年分の収入と経費の資料を整理し、適正な申告書を作成します。
  • ・税務署との交渉:自主申告であることを伝え、調査リスクや加算税の軽減交渉を代行します。
  • ・未来への対策:今後は適正な記帳体制を構築し、安心して事業に専念できるようサポートします。

まとめ:無申告は必ず発覚します。今すぐ専門家にご相談を

「無申告はバレない」という考えは、KSKシステムと法定調書という国の情報網の前では通用しません。

いつ、どこで、誰からの情報によって発覚してもおかしくないのが現状です。

無申告が発覚した場合、最長7年間の遡及調査と、重い加算税・延滞税が課され、その代償は計り知れません。

福岡で事業を営む皆様が、過去の不安を断ち切り、未来に集中できるよう、私たち福岡の税理士事務所が全面的にサポートいたします。

無申告状態からの脱却、税務調査対策について、お気軽にご相談ください。

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