赤字法人も安心できない?税務調査が入りやすい会社の特徴と実例| 福岡版
「会社が赤字で法人税を納めていないのだから、税務調査は来ないだろう」-これは多くの経営者が抱く誤解です。
実際に国税庁の統計を見ても、黒字法人だけでなく、赤字法人にも毎年数多くの税務調査が実施されています。
この記事を読むことで、福岡で事業を営むあなたが「赤字だからこそ狙われる理由」と、「税務調査で追徴課税を受けやすい具体的な実例」を理解し、未来の事業を守るための事前対策を始めるきっかけとなるでしょう。
赤字法人を税務署がチェックする2つの目的
税務署が赤字の会社に調査に入る目的は、主に以下の2つです。
目的1:将来の「課税ベース」を是正するため
現在の赤字申告に誤りがあれば、それは将来の納税額に影響します。
例えば、本来経費にできないものを計上していた場合、現在の赤字額が過大になり、将来黒字になった際に利用できる繰越欠損金(過去の赤字を将来の黒字と相殺できる仕組み)が不当に増えてしまいます。
税務署は、現在の赤字額を正しくすることで、将来の税金を確保しようと考えています。
目的2:「脱税」や「公私混同」による作為的な赤字を探るため
赤字申告の中には、本来は利益が出ていたにも関わらず、意図的に赤字を作り出しているケースが潜んでいます。
税務署は、特に以下の点を「不正」の兆候としてチェックします。
- ・売上の除外(売上隠し)
- ・架空経費の計上
- ・社長個人の支出を会社の経費にしている(公私混同)
- ・事業の実態がないにもかかわらず、形式だけ会社を存続させている
赤字法人が特に狙われやすい4つの特徴
黒字法人とは異なり、赤字法人は「なぜ事業が続いているのか?」という視点で財務状況が分析されます。
以下の特徴を持つ会社は、特に税務調査の優先度が高くなります。
特徴1:長期間連続して赤字だが「現金」は動いている会社
何年も連続で赤字申告をしているにもかかわらず、社長や役員の役員報酬が安定して高水準である、または毎年多額の現金が事業用口座から引き出されている会社は要注意です。
・税務署の疑問:「赤字で倒産しないのは、帳簿に載せていない裏の収入があるからではないか?」
特徴2:役員勘定(社長と会社の資金)の動きが激しい会社
会社のお金と社長個人のお金を分離できていない会社は、公私混同の温床と見なされます。
特に以下の勘定科目に残高がある場合は危険信号です。
- ・役員貸付金:会社から社長個人への貸付金が多額に残っている。
- ・仮払金:使途不明な経費や、社長の私的な立替払いが多額に残っている。
特徴3:不自然に「外注費」や「交際費」が増減している会社
赤字を大きくするために、費用科目の中でも特に自由度が高い科目が使われる傾向があります。
- ・外注費:本来は「給与」として源泉徴収すべきものを「外注費」として処理し、税金逃れを試みている疑い(偽装請負リスク)。
- ・交際費:社長個人の接待や飲食代を会社の経費として計上している疑い。
特徴4:売上と仕入のバランスが同業他社と大きく異なる会社
同業他社と比較して売上原価率(仕入が売上に占める割合)が極端に高い場合、過大な仕入や在庫の計上漏れ(意図的に利益を圧縮するため)を疑われます。
税務調査で赤字法人が指摘されやすい実例と論点
実際に福岡の企業が税務調査で指摘されやすい具体的なケースを、論点とともにお伝えします。
| 事例 | 実際の指摘内容(論点) | 課税リスク |
|---|---|---|
| 家族への外注費 | 業務の実態が確認できない、あるいは対価が不相当に高額であるとして給与と認定。 | 外注費を否認 →源泉所得税の追徴+重加算税リスク |
| 長期間残る仮払金 | 証憑(領収書など)がないため、使途不明金として処理。社長への賞与と認定される。 | 損金(経費)否認 →法人税の追徴+役員への賞与課税 |
| 旅費交通費の領収書 | 出張が業務に必須であったかの証明(出張報告書、会議議事録など)がない。 | 一部または全額が 経費否認となる可能性。 |
特に危険な「外注費の給与認定」リスク
外注費として処理していた報酬が、税務調査で「実態は社員への給与と同じ」と判断されると、源泉所得税の追徴に加え、重加算税が課される可能性があり、最もリスクが高い論点の一つです。
赤字法人だからこそ徹底すべき3つの税務調査対策
赤字が続いている会社こそ、経理の正確性を担保し、「不正の意図がない」ことを立証する準備が必要です。
対策1:役員勘定(貸付金・仮払金)をゼロに近づける
会社と社長間の金銭のやり取りは、税務署が最も疑うポイントです。
・仮払金の解消:仮払金は月末に精算し、残高をゼロにすることを習慣化してください。
対策2:外注先との契約書と業務の「実態」を明確化する
外注費を計上する場合は、以下の証拠を必ず揃えておきましょう。
・納品エビデンス:何に対する報酬か(成果物、納品物)を証明できる記録を保管する。
対策3:赤字になった原因を「書面」で説明できるようにする
税務調査では必ず「なぜ赤字なのですか?」と質問されます。
単に「売上が減ったから」で終わらせず、「新型コロナの影響で売上が〇〇%減少し、しかし固定費(家賃や人件費)は維持せざるを得ず、赤字になった」といった、論理的で客観的な事業報告書を準備しておきましょう。
まとめ:福岡での税務調査対策は専門家へ
赤字法人への税務調査は、「税金を取れないから来ない」ではなく、むしろ「不正や公私混同を見つけやすい」という視点で効率的に選定されています。
追徴課税を受ければ、赤字にもかかわらず追加の納税が発生し、事業再生の妨げとなります。
特に多額のペナルティが課される重加算税のリスクを避けるには、日頃からの適正な処理が不可欠です。
私たち福岡の税理士事務所は、赤字に苦しむ会社の税務調査対策、財務体質の改善を徹底的にサポートいたします。